現代日本文学の考古学
言語空間の読み方
山﨑正純 著
2022年1月20日発売
ISBN 978-4-910131-25-2
日本の現代文学は、いま確実に世界的な広がりを見せている。
これまで村上春樹が占めていた位置を、若い世代の女性作家が取って代わろうとする勢いだ。六〇年代から七〇年代に生まれた多和田葉子、小川洋子、柳美里、村田沙耶香は戦後の混乱期も学生運動も知らない。
戦後民主主義を信じた大江健三郎、その思想的敗北を経験した村上春樹とも異なる世代である。
この女性作家達を先導したのは、一九四七年生まれの津島佑子だったが、津島佑子の横には中上健次や李良枝がいた。
現代文学の主題の核心には、その時代の思想的臨界点が必ず映し出される。 臨界を超え、時代の基軸が揺らぐとき、文学は更新されていくのだ。 現代の文学の深部には、時代の基軸の揺らぎによってもたらされた異なる地層が幾重にも折りたたまれて沈んでいる。
文学のアルケオロジーは、現代文学の深層にある断絶と連続を探ろうとする試みである。
本書は漱石晩年の作品「こころ」から柳美里までのいくつかの作品を取り上げ、考古学的分析を試みたものである。漱石から流れ出る水脈が、異なる地層の隙間を縫うように絶えることなく現代にまで受け継がれている。
文学とこれから向き合おうとする若い世代にも、格好の導きの書となるに違いない。
書籍内容
第一章 漱石の水脈 —記憶と忘却の文化論
第二章 堀田善衛の詩文 —戦中と戦後の間
第三章 原民喜「夏の花」—灰白色の文字
第四章 村上春樹「レキシントンの幽霊」—甦りの挫折
第五章 津島佑子「半滅期を祝って」—記憶のアルケオロジー
第六章 柳美里「JR上野駅公園口」—天皇・ホームレス・浄土真宗
columm 現代日本文学の世界性
¥1,430価格