大震災・原発事故からの復活
「楢葉郷農家の10年」の場所
琴寄政人 著
2021年12月20日発売
ISBN 978-4-910131-23-8
「生きていてよかった。」それは、場所が生み出すもの。
そこで人は苦難に立ち向かい暮らし、笑顔をとりもどす。
震災・原発事故から二週間が過ぎて、福島にお邪魔し始めた。その中で徐々に感じるようになったことは、被曝や放射能のことではなかった。活動場所は、いわきの海岸から避難所に、そして仮設住宅へと移った。活動内容は瓦礫処理だったのが、被災者からの「ニーズ聴き取り」へと移った。
そこでもちろん、原発事故が生んだ苦しみや、互いに憎しみあう心を知ることになった。しかし同時に、揺るぎない人たちがいることも、少しずつ分かっていった。その人たちは、「なりわい(生業)」というものを身に着けていた。そこで、「なりわい」と「仕事」というものの違いを、初めて知ることとなった。力強い言葉と、緩やかではあっても確かな歩みには、「土のにおい」がした。愛した場所がまたやって来るという感慨がある、また、昔の元気を取り戻そうという場所がある。この場所を愛する人たちの力強い営みを感じる。
書籍内容
2021年
2011・2012年
「自営農業に失業手当は出ないよ」
いちいち突き刺さる言葉
事故前の相場
災害関連死
「最終処分」/帰還の可不可
元通りの生活2013年
「きのこや魚を食べた方がいい」は間違い?
楢葉町の思い
① 搾った乳を買ってくれるかな
② 食べた証拠
☆川内村の補償金☆
二年五カ月後の『福島民友』
① 鋭い動き
② 賠償認定
楢葉の明日/広野の顔と声
① 機会の精密化
② 広野の米・賠償相談
③ 農家と農地2014年
町会議員リコール
風評被害
貯蔵施設、建設中止
「グロテスク」な葛藤
浪江の気持ち
後遺症
①「心臓疾患」
②「美味しんぼ」
『新しい仕事』
去るもの/戻るもの
天神岬2015年
3・11を話す、おばちゃん
セシウムが消える?
五年後を迎えて
①「県内版」政府事故調
②「南相馬世界会議」
楢葉帰還への道
職務質問
牛舎
不審者!
売り言葉、売り物
① わだかまり・いわき
② 広野の末
③ 風評被害・ゆず2016年
「出てけ」
「オレは自由人だ」
コシヒカリ
警戒区域の牛、そして困難
楢葉の涙~仲村トオルの暑中見舞い~
帰還から一年
① 帰還率
② 爆発音
③ 甲状腺ガン
母屋の解体
弁当のレシート2017年
楢葉蛭田牧場
① 捨てるために搾ってた
② 世界初とか言ってくれるんだけどねぇ
③ カメラも連れて来ねえし
七回目の3・11
開運招福しま ~楢葉の春~
総理がやって来た
「家族は137人」
「風化」「風評」ではなく
おばあちゃんの話 大熊町
「これしかできねえんだよ」2018年
国道114号線
「はつ」と「つくし」
① 子牛誕生
② お金を使わなかったわけ
③ 「そのためにやってんだ!」
母屋の完成を前に
① デマ?真実?
② 「気兼ねなくていいよ」
暮れ~出産2019年
農業の明日
① 新居
②「下町ロケット」
③ 牛乳生産のシステム
「生活基盤」ができて
① ためらう帰還
② 牛の値段
③ 堤防決壊2020年
コロナ
楢葉という「場所」
空襲より大変だ
農家への影響
十度目の師走
① 思いがけない仕打ち/牛の場合
② 思いがけない仕打ち/人の場合
③ まんざらでもない
別な時間と空刊行に寄せて 渡部 昇